ひな菊は野に咲け 5
惣七が戦争から戻ってきたとき、森田の娘は亡くなっていた。
その後彼は黙々と木を切り、きんまに乗って木を運んだ・・・。
その働きは誰の目にもすばらしく、誰もが家を継ぐものと思っていた。長男は出奔し、三男正秀はまだ小学生。
しかし継母はすべての実権を握ってますます過酷な仕打ちを前妻の子供たちにする。
家がほしいから働くんだろうと言いふらせらることに絶えられなくなり惣七は故郷を捨てる。
着の身着のまま家を後にし切り立った山の斜面の一人がやっと通れる細い道を下っていくとき学校から帰ってくる小学生の妹マツノと正秀に出会う。
「あんにゃんどこいくの?」
「あー川口までいってくんかんな・・・おふくろ大切にしろよ!」
人をうらまずただひたむきに生きた男であった・・・・・・
その後残されたマツノと正秀は、家を出て遠い親類宅をたずねる、しかしみんなが貧乏な時代、馬屋で生活するが食事も与えられず、米ぬかをすすって生き延びる、
正秀は「ねえやんおいしいで」といって食べた・・・・ずいぶん時代がたった後マツノがこの話を昭夫にしたとき号泣した。
正秀はその後蛍雪の苦学をし部屋は専門書で埋まっていく、誰もが彼が未来を築いてくれると信じていた。
そして太平洋戦争で召集され輸送船に乗ってフィリッピン沖で魚雷に撃沈され海の屍となった。
戦後、生き残った戦友が、山奥に尋ねてきて、その最後を聞いて、マツノだけが泣いた。
マツノが嫁いで、継母一人残った家は遠い親戚の娘を養女にとり、養子を迎えて、男系の血筋をなくす。
故郷を捨てた惣七はその後、船乗りとなり世界を回り船を下りて日雇いの仕事を渡り歩き、酒とばくちに明け暮れる。
ある日、魚の行商のおばあさんが宿舎に来て親しくなる。
「あんちゃん、所帯持ったほうがええ、働き者のいい子がおるよ」
時代は昭和に入り、中国を舞台に列強のしのぎあいが始まっていた。
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