山里の少女 8 超時空編
「ねえ・・また来る?いつ来る?」
「・・もうこない・・・・」
「えっもうこないの?」
「・・うん・・・・」
押し黙る少女・・・・・・3時の汽車の時間が迫る・・
少女は立ち上がり中へ入る・・・・・・・・・・・・
汽車の時間がせまるがなかなか少女が出てこない・・・
駅までは歩くと5分はかかる・・・
そのとき奥から妹が出てくる・・・・・
「お客さん・・私が送っていく・・・・」
「えっつ?・・・・ありがとう・・・・・お姉さんは?」
「うん部屋に上がって出てこないから私が送る」
「・・・・・なぜなのか理解できないまま妹が自転車を
出してきて、僕が後ろに乗る。
宿を後にして駅までの道をひた走る・・・押し黙る二人。
駅に着き切符を買い改札に入る後ろを振り返ると妹が
笑顔で手を振っている・・・・僕も笑顔を返し手を振る。
「さようならあああああ!」
「さようなら・・・・」
そのままホームへ出ると汽車が入ってくる・・・
やがて僕を乗せた汽車は汽笛を鳴らし山里の駅を出る。
道で妹が手を振っている・・・ドアの前に立ち僕も手を振り
汽車は速度をあげる。
少女がいないかと僕は線路横の道を眺める・・・・
やがて宿の横に差し掛かる・・・・なぜか僕は腰掛けて
宿の反対側に向いたまま汽車は速度を上げ汽笛を鳴らす。
照葉樹林の谷間を抜けやがて分水嶺の峠を越えて汽車は
太平洋側へと下り始める・・・・
昨夜は眠れなかったのでなんか疲れがどっと出てくる。
窓に持たれて目をつぶる。・・・・
そのとき、僕の前に何かの気配がした。
わーー大きい犬だあ、どうしたんだろう飼い主らしい人は
いないのに・・・
その犬は僕の前でちょこんと座っっていた。
手をだすと擦り寄ってくる、優しい目で僕に何かを語る・・・
そのとき次の駅からおばさんがあわただしく乗り込んで
きて僕の車両に入ってきた。
「あーーーーここにいたのキャロッ!!」
「あーーおばさんの犬ですか?やさしそうな犬ですね」
「あーーかわいいでしょ!・・あーー前の駅で見てたら
キャロットたら汽車に乗り込んでしまったので、車で追い
かけてきたのよ!あーーよかった40年も前に置いてき
ぼりにしてしまうことになったらともうびっくりしたのよ」
えーーこのおばさん・・何言ってんの?いみわからん・・
「そうそう、きっとそうよ女は素敵な恋は忘れないわ!」
えっ?気がつくと隣の座席にかわいい猫を抱いた素敵な
おねえさんがいる。僕と同じ年ぐらいだろうか・・あーー
そういえば宿の少女に似てるなあボインだし・・・・・・・・
でもこの人たち何なんだろう意味わからん。
「おばさんもおねえさんも大阪まで帰られるんですか?」
「いやすぐ消えます・・」
「わたしも」
なに言ってんだろうこのひとたち。消えるだなんて。
「あーー青年!失恋でもしたの?」
「えーーそんなことないです・・・・・・・・」
「そう、まあ若いうちはなんもわからないうちに女の人を
泣かしてしまうこともあるけど、女の人は生涯のいい思
い出としてきっと君を思い続けてくれると思うよ!だから
いろいろいっぱい恋をしたらいいねんで(^_^)」
なにいってんだろこのおばさん・・いみわからん。
そのとき窓の外で何かが光った・・ひゅんひゅんひゅん
「あーー青年、エスカル号が出るみたい、元気でね!また
会えるよねどこかで」
「あーー私も行きます、ではばいなりーー」
「わんわんわん」
「えっつ?」
気がつくとその犬とおばさんとおねえさんはいなくなっていた。
あーーなんだったんだろううとうとしていたから夢か?
僕は呆然と遠く輝く樅の山々を眺めていた。
茫漠とした心の奥からふつふつとわいてくるものがあったが
それが何を意味するかまだ気がつかない僕であった。
驀進する汽車の窓から夏の終わりの日差しが僕を照らして
いた。
山里の少女 8 超時空編 〜完〜
| 固定リンク | コメント (7) | トラックバック (1)




最近のコメント