カテゴリー「■山里の少女」の8件の記事

2005.12.09

山里の少女 8 超時空編

「ねえ・・また来る?いつ来る?」

「・・もうこない・・・・」

「えっもうこないの?」

「・・うん・・・・」

押し黙る少女・・・・・・3時の汽車の時間が迫る・・
少女は立ち上がり中へ入る・・・・・・・・・・・・

汽車の時間がせまるがなかなか少女が出てこない・・・
駅までは歩くと5分はかかる・・・
そのとき奥から妹が出てくる・・・・・

「お客さん・・私が送っていく・・・・」

「えっつ?・・・・ありがとう・・・・・お姉さんは?」

「うん部屋に上がって出てこないから私が送る」

「・・・・・なぜなのか理解できないまま妹が自転車を
出してきて、僕が後ろに乗る。

宿を後にして駅までの道をひた走る・・・押し黙る二人。

駅に着き切符を買い改札に入る後ろを振り返ると妹が
笑顔で手を振っている・・・・僕も笑顔を返し手を振る。
「さようならあああああ!」
「さようなら・・・・」

そのままホームへ出ると汽車が入ってくる・・・
やがて僕を乗せた汽車は汽笛を鳴らし山里の駅を出る。
道で妹が手を振っている・・・ドアの前に立ち僕も手を振り
汽車は速度をあげる。

少女がいないかと僕は線路横の道を眺める・・・・
やがて宿の横に差し掛かる・・・・なぜか僕は腰掛けて
宿の反対側に向いたまま汽車は速度を上げ汽笛を鳴らす。

照葉樹林の谷間を抜けやがて分水嶺の峠を越えて汽車は
太平洋側へと下り始める・・・・

昨夜は眠れなかったのでなんか疲れがどっと出てくる。

窓に持たれて目をつぶる。・・・・

そのとき、僕の前に何かの気配がした。

わーー大きい犬だあ、どうしたんだろう飼い主らしい人は
いないのに・・・
その犬は僕の前でちょこんと座っっていた。

手をだすと擦り寄ってくる、優しい目で僕に何かを語る・・・

そのとき次の駅からおばさんがあわただしく乗り込んで
きて僕の車両に入ってきた。

「あーーーーここにいたのキャロッ!!」

「あーーおばさんの犬ですか?やさしそうな犬ですね」

「あーーかわいいでしょ!・・あーー前の駅で見てたら
キャロットたら汽車に乗り込んでしまったので、車で追い
かけてきたのよ!あーーよかった40年も前に置いてき
ぼりにしてしまうことになったらともうびっくりしたのよ」

えーーこのおばさん・・何言ってんの?いみわからん・・

「そうそう、きっとそうよ女は素敵な恋は忘れないわ!」

えっ?気がつくと隣の座席にかわいい猫を抱いた素敵な
おねえさんがいる。僕と同じ年ぐらいだろうか・・あーー
そういえば宿の少女に似てるなあボインだし・・・・・・・・

でもこの人たち何なんだろう意味わからん。


「おばさんもおねえさんも大阪まで帰られるんですか?」

「いやすぐ消えます・・」
「わたしも」

なに言ってんだろうこのひとたち。消えるだなんて。

「あーー青年!失恋でもしたの?」

「えーーそんなことないです・・・・・・・・」

「そう、まあ若いうちはなんもわからないうちに女の人を
泣かしてしまうこともあるけど、女の人は生涯のいい思
い出としてきっと君を思い続けてくれると思うよ!だから
いろいろいっぱい恋をしたらいいねんで(^_^)」

なにいってんだろこのおばさん・・いみわからん。

そのとき窓の外で何かが光った・・ひゅんひゅんひゅん


「あーー青年、エスカル号が出るみたい、元気でね!また
会えるよねどこかで」

「あーー私も行きます、ではばいなりーー」
「わんわんわん」


「えっつ?」

気がつくとその犬とおばさんとおねえさんはいなくなっていた。
あーーなんだったんだろううとうとしていたから夢か?


僕は呆然と遠く輝く樅の山々を眺めていた。
茫漠とした心の奥からふつふつとわいてくるものがあったが
それが何を意味するかまだ気がつかない僕であった。

驀進する汽車の窓から夏の終わりの日差しが僕を照らして
いた。


山里の少女 8 超時空編 〜完〜

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2005.12.08

山里の少女 7

工事は順調に進み、竣工した。
最後の日は午前中数軒のテレビ受像機の故障の点検に
電気屋さんと回る。

昼食を宿でとり、昼過ぎの3時の汽車で帰る。
昼食に少女がいつも以上の料理を運んでくれてかいがいし
く世話を焼く。

「なんかあ、もう帰るんやねえ。」

少女が微笑みながら僕を見つめつぶやく。

「うん・・・・」

なんとなく元気のない返事でかえす僕。

「3時の汽車で帰る?」

「うん・・・・」

「自転車で送っていくね!」

「うん・・・・」

食事が終わって少女はあとかたずけに出て行き僕も部屋に戻り
荷物をかばんに詰める。
雪見障子から夏の終わりの日差しがさしている。

あーー終わりかあ・・・・寂しさが襲ってくる。
2時過ぎに表の床机に腰掛け、3時を待つ。

少女が出て来て横にかける

「あーーもうすぐ汽車来る・・・たのしかった
 わたし就職大阪行きたい・・いい?」

「えつ?親は?」
「たのんでみる」

「いい?」
「うん・・・」
とまどう僕・・

「ねえ・・また来る?いつ来る?」

「・・もうこない・・・・」

「えっもうこないの?」

「・・うん・・・・」

押し黙る少女・・・・・・3時の汽車の時間が迫る・・
少女は立ち上がり中へ入る・・・・・・・・・・・・

汽車の時間がせまるがなかなか少女が出てこない・・・
駅までは歩くと5分はかかる・・・
そのとき奥から妹が出てくる・・・・・

「お客さん・・私が送っていく・・・・」

「えっつ?・・・・ありがとう・・・・・お姉さんは?」

「うん部屋に上がって出てこないから私が送る」

「・・・・・なぜなのか理解できないまま妹が自転車を
出してきて、僕が後ろに乗る。

宿を後にして駅までの道をひた走る・・・押し黙る二人。

駅に着き切符を買い改札に入る後ろを振り返ると妹が
笑顔で手を振っている・・・・僕も笑顔を返し手を振る。
「さようならあああああ!」
「さようなら・・・・」

そのままホームへ出ると汽車が入ってくる・・・
やがて僕を乗せた汽車は汽笛を鳴らし山里の駅を出る。
道で妹が手を振っている・・・ドアの前に立ち僕も手を振り
汽車は速度をあげる。

少女がいないかと僕は線路横の道を眺める・・・・
やがて宿の横に差し掛かる・・・・なぜか僕は腰掛けて
宿の反対側に向いたまま汽車は速度を上げ汽笛を鳴らす。

照葉樹林の谷間を抜けやがて分水嶺の峠を越えて汽車は
太平洋側へと下り始める・・・・

僕は呆然と遠く輝く樅の山々を眺めていた。
茫漠とした心の奥からふつふつとわいてくるものがあったが
それが何を意味するかまだ気がつかない僕であった。

驀進する汽車の窓から夏の終わりの日差しが僕を照らして
いた。


山里の少女 〜完〜

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2005.11.27

山里の少女 6

鎮守の森への参道の両側には縁日の夜店が並ぶ。
鎮守前の広場ではやぐらが組まれ、盆踊りが始まっていた。
二人は夜店をのぞき、綿菓子を買う。

すいていた参道もいつの間にか混んできて二人の距離は
近くなりいつしか手をつなぐ。

少女は少しはにかみうちわで口を隠す。
やぐらには男集が鉢巻姿で太鼓をたたく、やがてSPレコードの
歌が流れ、踊りの輪が出来る。

二人は手をつないだまま眺める。
なぜか会話が途切れ押し黙る二人。

やがて人ごみに押し出されるように広場をでて、川にかかる
橋の上に歩く、そこは祭りの喧騒も少しはやわらいで幼い子供
たちが線香花火に興じている。

欄干にもたれ顔を見合わせるが会話を交わすこともなく月明かりの
川面を眺める。

あっ!ほたる!・・僕がその沈黙をやぶる。
えーーほたる?・・うそおお!
もうほたるは終わったん違う?

でもほらほらあそこ、ほらほら!違うかなあ!あそこ!
指の指す方向にのりだし肩が合う二人・・・

太古より男と女はこんな時を刻んできたのだろうか。

やがて二人は笑いながら手をとってまた祭りの喧騒の
森へ走っていった。

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2005.11.20

山里の少女 5

山里は真夏だった。
日差しは強く集落の民家の屋根や軒先で仕事をするのは大変である。

その日は遠くの鎮守の森から祭り太鼓が聞こえてくる。
僕はその夜の縁日に思いをはせていた。

仕事は順調に進み、宿に戻る。

少女はいつものように僕に風呂をすすめ、食事中かいがいしく世話を
焼いてくれる。
いつもよりは妖艶で微笑を絶やさなかったが、口数は少なかった。

食事が済む。

「じゃあ私後片付けがすんだら用意するから表でまってて!」

僕はいつものように表の夕暮れの床机にすわり涼んでいる。
遠くで祭り太鼓がだんだん激しく聞こえてくる。

鎮守に向かう村人が前を通る。
すっかり日は落ちて暗くなり一段と太鼓の音が激しくなる。

「おまたせ」少女が出てきた。
少女は浴衣姿・・あーー素敵だ。

その手には2枚のうちわ・・・・・はにかむように一枚をだまって
僕に差し出す。

僕もはにかみながら受け取り、いたたまれず鎮守の方へ歩き出す。
少し遅れて少女も歩き出す・・・・黙って歩く二人。

そのうちに少女は僕に追いつき横にはなれて歩く・・・
ときどき二人目を合わせ照れて微笑む・・・・・・・


祭り太鼓が二人をいざなう・・・ああ夜よこのまま・・・・・・・・・・


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2005.11.11

山里の少女4

仕事は順調に進んでいた。
夕方早い目に仕事を切り上げ、少女と過ごす。

「ねえ、歌手はだれが好き?」
「そうやなあ、橋幸夫すきやなあ、舟木もええし、新人賞とったな。

「私・・西郷輝彦・・」
「あーなんか新人らしいけどどうなん?」
「ものすごい売れてるよ・・君だけを・・・・・大好き」

「どんな歌やったかなあ・・うたってえよ」
「♪いつでもお いつーでもお きみいだあけえをーーー♪」

そんな時間を過ごしていた・・

「なあ大阪ってええとこ?」
「うーーんええとこかどうかようわからんけど僕は大好きやなあ。
でもここはもええとこやと思うけどな。
ここと違うことはあ 喫茶店がいっぱいある、映画館もいっぱいある、
卓球場、とか、スケートリンクとか、野球場とかほら甲子園!、それから百貨店もあるやろ!
せやけどここからやったら日本海側に行けば結構大きい町あるんちゃうん?」

「うん福知山まで行けばあるけど、ちっちゃいなあ・・・都会に行ってみたいなあ」

「そろそろ就職先さがさなあかんねん・・親は福知山に行けっていうねん・・家から通うなら
そこしかないけど、大阪行ってみたいなあ、許してくれへんやろなあ」

「うーん、大阪やったら仕事いくらでもあると思うけど、だれか親戚でもいてるん?」
「ううんいてへん」
「そうかあ、そら親しんぱいやなあ」

「うん知り合いならいてるねん」
「そうなん、ほんならなんとかなるんちゃうん」

「うん、その知り合いって、目の前にいてる人・・」
「えーーーーーー僕?」
「はははは」

そのころ日本ではやり始めた、ミニスカートから伸びた肉付きのいい太ももに
目のやり場に困りながらもちらちらと見る僕があり、女というには足らず少女と
いうには過ぎた乙女の香りが僕を包む。

「ねえ、明日、鎮守でお祭りやねんで・・一緒に行く?」
「えっ!お祭り!うん行く!どんなお祭り?」
「盆踊りがあってお店がいっぱい出て、村の人みんな行く」

「そうなんやあ、村の鎮守のお祭りかあ!楽しみやなあ、仕事早い目に切り上げる」

「うん始まるのは暗くなってからやからお風呂ははいって、ご飯食べてからでええと
思う。」

「わかった」


夏は盛りを迎えていた。

Satoyama1


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2005.11.07

山里の少女3

暑い夏であった。
ぎらぎら照る太陽の下で家々の屋根や外壁に張り付いてテレビケーブル
を打ち付けていく作業は過酷ではあったが、そのようなことが当然のような
時代であった。

むしろそのような作業が楽しくもあり充実していた。
集落の人たちはやはり素朴で親切で、家々で冷たい「ワタナベのジュース」や
果物の差し入れがあったりして、「テレビやさん」と親しまれていった。
待ちに待ったテレビが家々につくという期待感が集落中に広まっていった。

夕方作業を終えて宿に戻ると、一番風呂が待っている。

「お風呂沸いてるよおお」
彼女が明るい笑顔で僕にすすめる。

「はあいおさきにい」
風呂をあがると彼女が部屋で待っていて夕食がはじまる、僕の食事が済むま
で横に座り、お茶をついだり、おかわりをよそってくれたりしながら他愛ない話
で笑い転げたり。

食事はおいしく量も日をおって多くなっていった。

食事が終わると表の床机で夕涼み、花火や、学校のできごと流行の歌謡曲の
話題がはずむ。

都会の女性とはまったくちがい化粧もない純朴な明るい少女に僕は心を奪わ
れていった。

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2005.11.05

山里の少女2 

その山里の集落の南のはずれに福田家はある。
宿で弁当を作ってもらって、歩いて15分ほどの隣の集落まで行き
昼間工事をし、夕方宿へ戻る。

仕事はすでに出来上がっている集落内のテレビ共同聴視幹線の
中継器から3C2Vケーブルで家屋の壁を貫通してテレビを置く茶
の間まで引き回し、変換機でテレビに接続する。すべての家に接
続が終わってからアンテナブースターや中継器の電源を入れテレ
ビの調整をして完成となる。
一日5から10軒の作業で一ヶ月の予定である。
雨の日は一日宿で過ごす、日曜日は休み、作業は順調に進み夕
方早く宿に帰り、近くの川や、鎮守の森に行って時間をつぶす。

Satoyama2


気楽で穏やかな日々であった。
春に親父をなくし、母親が一人で家で留守番していてなんとなく
さびしい状況を忘れさせてくれる出張ではあった。

しばらくして、福田家の高校3年の少女は夏休みとなり、彼女が
僕の食事中世話をしてくれることとなった。

山里の純朴な少女であった。

そのころ橋、舟木、と続き 西郷輝彦が「君だけを」で爆発的な
テレビブームに火をつけようとしていた。
そのような会話から二人はたちまち仲良くなり、縁側で将棋崩し
や、川辺の散策、夜は宿の前のしょうぎにすわり、語る。

めくるめく山里の夏であった。

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2005.10.18

エスカル号1964-7 山里の少女1

「こんにちわあ 今日から一月ほどお世話になりまあす」
「はあい、あーー予約していただいていた方ですね、ようこそようこそさどうぞどうぞ」

関西の分水嶺を日本海側に降りるとある山里の小さな旅籠は福田屋といっった。
電機メーカーのサービス部門の技術者だった僕は当時の特別立法でテレビ放送の難視聴の山間地への共同聴視システム構築のための工事を担当して派遣された。

冬の間に村はずれの山頂にアンテナ基地から村の基本ラインケーブル中継基地設営、電柱敷設、を現地の人を雇い入れながら済ませていて、今回は一人で中継機器から各家々への配線と、テレビ取り付け調整に一月ばかりの予定で出張してきた。

福田屋は村で唯一つの旅館であった。旅館といっても当時の山里では観光客相手ではなく行商人や、村の寄り合いなどで細々と家族で経営していて、主な収入は農業であるような旅籠であった。

お茶をすすりながら女将としばらく世間話をして部屋へ案内された。
大きな寄り合いや宴会のとき使われるのであろう大広間がふすまで二つに仕切られてはいるがそれでも12帖はあっただろうか。

荷物を置いて夕食までのひと時裏の川へいったり村を散策する。

福田屋には高校3年と中学生の姉妹がいた。

忘れえぬ夏の物語の始まりであった。

山里の少女 1 ~プロローグ~


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