カテゴリー「■旅立ちの挽歌」の5件の記事

2006.08.24

旅立ちの挽歌5 ~あらたなる冒険の始まり~

人生とは旅であるというテーマはセンチメンタルな響きを持つ。
特に旅立ちのときは未知の世界への希望の響きと、悲しい別れの響きを持つ。

このときの僕の涙は仲間が僕達の夢の半ばで挫折し遠い遠い山陰の僻地に行ってしまうという思いが強く悲しかったのだな。

そしてこのときかめさんとこれからがんばって会社を盛り返し、彼を堂々と呼び戻そうと誓ったのだ。

それからの仲間は寝る時間を惜しみ、本格的な基礎勉強とシステム開発に没頭していった。
時代はWINDOWSが世に現われる前、MSDOS全盛パソコンが世に現われ、日本でも本格的に事務機器としてその地位を得ようとしていたときであった。

その性能をフルに発揮できる画期的な店舗管理システム構想が僕の視野に漠然と湧き上がっていった。
よしこれで日本制覇だ!無謀ともいえる冒険の旅がまた始まった。

たった一度笑うために何度でも泣いたっていいや。

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2006.08.22

旅立ちの挽歌4 ~イツマデモキミノトモダチ~

明日には、彼は、遠い山陰の小さな町へ旅立つ・・・
僕はそれに何もできないでいた。

パンチパーマの営業マンをテーブルに案内していたとき、電話が鳴る。

「社長!奥さんから電話です」

電話に出る僕・・・

電話の向こうで家内が泣いている・・・

「どうした、どうしたッ?」

「きたろーさんが来て今帰った・・それでねこれを使ってくださいって封筒を置いていった・・・
50万円入ってる・・・・」

「えっ・・・・・・あーーーーーそうか・・うんうんわかった」


テーブルに戻った僕は営業マンの説明を上の空で聞いている。

「あーーよくわかりました、ちょっと検討してみますので、又連絡します、申し訳ない」

翌日・・S店で「亀さん」と二人で忙しい時間をしのぎ、一段落して厨房の裏で休憩をする。

「あーー今頃車は出てるんやろうなあ」
「あーそうや」

「これからがんばって、また呼び戻そうや」
「呼び戻しましょう・・がんばりましょう」


僕は耐えられず、うつむいてぼろぼろ涙を流し嗚咽して泣いた。

かめさんも壁にもたれてしくしくと泣いた。

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2006.08.21

旅立ちの挽歌3 ~受け継ぐべきもの~

80年代後半消費税の導入と共にバブルの狂騒に不安が増大していった、当社でもこのままでは産業構造が大きく変わっていくと予想されていった。
弱小の企業はナショナルチエーンの企業に淘汰されていく。流通の激変が起こるであろう。
90年代に入りそれは徐々に現実のものとなっていった。
経費の削減が企業の最大のテーマとなっていった。

社員の削減と、パートタイマーへのシフトだ。
そんな戦いのさなか、きたろーが僕に言う。

「LIBERTYも外へ出て行った・・次は僕の番かなあと思ってるねん。」
「えっどういうこと」

「一回外で修行して来ようかと思う」

「えーーそれは違うと思うけど」

システム事業へシフトしている現状でフード事業をまとめてもらうつもりであった僕としては予想外の展開であった。

「どうするつもりや」

「ローンで買った家がやっと売れることになって、少し金ができる、家を建てたいけど大阪では無理、丁度家内の山陰の実家のお父さんがなくなって、長女として家に戻る話も出て、向こうなら家も立つし、生活費も安いし、3人の子供の教育も考えるとこのままではあかんかなあって思う」

彼が会社のことを思い身を引かねばという優しさがそういうことになっていくのだろうが、引き止める根拠を持っていない歯がゆさが、それ以上何もいえなかった。心の中で「ごめんよ」と叫んでいた。

やがて夏が来て明日山陰に旅立つ二日前であった。
家内から電話がある。

「きたろーさんが明日最後の挨拶に家へ来るって」

あーー店が忙しくて人手もないから引越しの手伝いにもいけないし、帰るまでに前倒しで給料とボーナス渡してやりたいよなあ・・でも資金繰りが厳しくて手元の資金を流用すると何とかなるけどすぐ明日回ってくる支払いがショートする・・・困ったなあ。

家内には明日僕は店抜けれないから、来たら渡しておいてくれと、金を袋に詰めて渡す。
そして明日の支払い資金を高利金融から調達することを思い立つ・・当時利息42%の商工ローンだ。
今まで絶対に手をつけなかったのだが仕方ないなんとしても彼には渡して送り出してやりたい。

チラシの入っていた金融屋に電話をし50万円の融資を申し込む、明日店に来るように約束をとる。
なんとかこれで急場はしのげる・・・ああ苦しい・・・

翌日、僕は店に入って金融屋の来るのを待つ。

時間になり、金融屋がたずねてくる。

「どうもお、あっ社長さんですかあ、○○商事ですがあ」

パンチパーマの見るからにそれらしい男がやってきた・・はははは、

「あどうも、どうぞそこのテーブルでどうぞ」
案内しているとき、店の電話が鳴る、店の子が取る。

「あっ社長さん、奥さんから電話ですう」


人から人へ受け継ぐべきもの・・・それは確かに存在する・・・・

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2006.08.20

旅人達の挽歌2  ~闘う男達~

2店目のレストランはその後厳しい戦いが始まった。
ショッピングセンターでのレストランという経験のない僕達にとってすべてが試行錯誤でやるしかない。

きたろーとしては京都方面の料理の世界で修業したので少し高いレベルに設定していた。
レベルを買い物袋にダイコンが入っている客を対象とする意識に欠けていたわけで、料理は箸で、ランチは定食へ、お子様ランチはあられちゃんせっと、くまさんせっと、かにサンセット、パンダセット等の改定でやっと売上も順調に行きだした。

その成功をきっかけにデベロッパーの信頼を得、次の3店舗目、4店舗目と出店が続き社員も増え、月一回の徹夜に近い会議はそのご20年近く欠かさず行われる。本社店舗間のデータ通信もいち早く手がけ、社員にはパソコンを一台ずつ支給、資料はすべて表計算ソフトを使いこなしての作成となって社員は厳しい闘いの日々を送ることとなっていった。

おりしもバブルの景気にかげりが見え始めたころ、業態の拡充をもくろみ自社開発された店舗システムを事業部へするべくLIBERTYはその業界へ修行に出る、見通しが立てば、帰ってきて別会社で今で言うIT会社を設立する5カ年計画が始まる。

無からの会社は利益はすべてが次の店舗や開発費用に当てられていった。
それは経営というよりもただの冒険といえた。とにかくすべての仲間が入ってやっていける会社にすることが僕の使命であったのだ。

借り入れはどんどんふくらみ、バブルの末期には借り入れ利息が8%までの時代となり資金繰りに徐々につまっていくことになる。

若い社員は、その技術の要求に耐えられなくなる。IT事業の夢物語にも疑問を感じる者も出、一人抜け二人抜けと離れていく。
仲間はそれでも未来を信じて必死に耐え、研鑽に励んだ。

そしてバブルの崩壊が始まる。
売上のダウンと、無制限といえる銀行の貸し出しで借り入れを増大させていた企業はすぐにその影響を受けていった。
それからの会社は文字通り生き残りのためのきびしいきびしい戦い。
それは日本中の企業が同じ運命をたどって行ったのだ。

あるとき「きたろー」が思いつめたように口を開く。


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2006.08.19

旅立ちの挽歌1 ~SAYいっぱいをありがとう~

もしもしいきたろー?あー僕!
どうや店・・

「うーーん、厳しい、インベーダーの機械入れたけどブームが終わって支払いに四苦八苦」
「あーーそうやなあ、入れるの遅かったな」

「あのなあ、第2店目出店決まったで。今度はファミリーレストランや」

「えーーすごい!・・人手は?」

「えーーだれかコックさんおらんかなあ」

「ここにおるやん、いくいく」

「今の店は?」

「すぐ閉める!はははは」

「そうかあ、よっしゃあ頼むで、はははは」

1980年彼はそれまでやっていた金沢のパーラーを閉めて家族で引越ししてきた。
奥さんは音楽活動で各種イベントを共にやった関西のあるグループのボーカルだった。

大阪の深南部のショッピングセンターへの2店目の出店であった。
彼はいづれそのときが来ると、修行のつもりも半ばあったのに違いないが、第一店目が作られたとき飲食業の修行をし、チャンスを得て店を開いていたが思ったように行かないもので、苦しい戦いを続けていた。
乳飲み子を抱え、奥さんは縦横無尽の活躍で彼を支えていた。

そんなこともあって当社のレストラン開店は仲間が待ちに待っていた多店舗化への第一歩としていろいろな形で力が合わされていった。
実績経験のない業態への参入はさまざまな問題があったがことごとく解決でき開店にこぎつけることが出来た。

オープン第一日目は戦争状態で、仕込み材料はことごとく午前中で切れていき、一日目が終わって翌日の仕込を終えて明日の人の応援を京都の「昇」に電話する。

「応援してくれ出来るだけ多く」
それから彼は電話のない友人達を深夜2時間歩き回って彼の仲間をあつめ翌日やはり2時間かけてやってきてくれたのだった。

一日目借りていたアパートにきたろーと二人戻ったのは深夜になっていた。
何もない部屋で店から持ってきたあまりものとビールで乾杯をする。

僕はなぜかぽろぽろ泣いた。

旅立ちの挽歌1  ~SAYいっぱいをありがとう~


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